永井 明氏逝去
私は、まず最後通牒にて、氏の訃報を知りました。医龍-medical dragon-の原作者(というか医学監修に近かったようです)として。大学病院を舞台に、「白い巨塔」とも「ブラックジャックによろしく」とも違うダイナミックな展開がとても楽しみでした。大学病院の体質さえも、患者を救うために利用する主人公の姿は新鮮です。去年の春、父を食道がんで亡くしてから医療モノに敏感に反応してきたように感じます(「研修医ななこ」も良いですね)。
最初気付かなかったのですが、書名だけは知っていた「ぼくが医者をやめた理由」が共通項として浮かびあがった時、この人が、asahi.comのコラム メディカル漂流記の著者でもある事に気付いて愕然としました。改めてバックナンバーを見ると、6月9日の「遁走序曲」の時には、もう…。飄々と「逃げろや逃げろ」とやってる様に人柄が偲ばれます。
話変わって。
肝臓がんだから入院・延命治療なしという選択がベストだと判断されたということもあると思います。症状が出なくて手遅れになる代わりに、QoLを保ったまま過ごす事もできそうです。
食道がんだと、こうは行きません。放っておけば、すぐに食道が閉塞して食べられなくなり、QoLは著しく低下するので、その術式の高い難易度にも関わらず、ほとんど「切る」しか選択肢はありません。食べられないということは、人生の楽しみの多くの部分と体力を奪います。
術式は、消化器官ではトップクラスの難易度です(だから財前教授はよく、切っていました)。食道は気管と脊髄に挟まれていて、しかも周りをリンパが囲んでいます。前からアプローチする事はできないので、肺ごと気管をどかして隙間を作って、下からアプローチします。この時、肺へのダメージが大きいので、術後は呼吸器系の回復もまた大きな課題になります。そのため、紹介されて入院した病院は、かつて結核治療で有名であった七国山病院…じゃなくて新山手病院でした。また、リンパへの転移を見逃し取りはぐれるとアウトです。これらだけでもかなり不利な賭け(しかも降りられない)になりますが、糖尿病を併発していると、予後の経過が良くないです。父はこれに引っかかって、術後三週間であっけなくいってしまいました。一時は、起き上がって、氷なんかポリポリしてた位なんで、本当にあっけないなぁという感じでした。まあ、活きの良い外科部長氏の技術向上には、役に立ったでしょうね。
そんなこんなで、普段から健康は大事ですねって事です。
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Comments
ひょんなことから見つけたんだけども、実は食道がんいは放射線治療が相当がんばってきてるらしい。術後が勝負の手術と、放射線当てやすい事と天秤にかけると半々らしい。
柏の国立がんセンター東病院が良いそうですよ。
Posted by: さとしす(satoshis) | 2008.08.25 06:51 PM